POSTS

下浦萌香 個展「デラ ハジ リ」。“制限”って、新しい発見を生むらしい

2021.04.24

さて、今回Nowhere Hajinosato×アーティストの行った展示は、絵画です。 下浦萌香さんは、昨年の春大学院を卒業した若手作家。 様々な技法を用いて創作に取り組む下浦さん。今回は「デカルコマニー」という転写の手法を使った作品でいっぱいのNowhere Hajinosatoとなりました。 “作り方”はもちろん、 “伝え方”にも重視しているのが今回のおもしろいところなのかもしれません。

謎のネーミング、再構成によって生まれる

うっちー(以下、う):
まず、真っ先にこれナンダ??と思ったのが展覧会のタイトルの「デラ ハジ リ」。
ここにはどんな意味が込められているのでしょう?

下浦さん(以下、下):
藤井寺と、土師ノ里から「デラ」「ハジ」を取って、「リ」は“再構成する”を意味する「reconstructed」の頭文字です。
“藤井寺の土師ノ里で、見つけたものを再構成する”という意味を込めました。
再構成というのは、私の制作の仕方がモチーフを観察して得た発想を画面上で組み合わせていき、改めて構成していくからです。

う:
なるほど、ちょっとスッキリしました〜(笑)
このネーミングは、下浦さんが考えたんですか?

下:
いいえ、カフェ(pet de nonne)担当の松川さんです。
私が最初考えたのは「藤井寺のなか」というタイトル。作品が分かりづらい表現なので、カフェに来たお客さんたちに伝わりやすいようにと思ったんです。
そしたらNowhereさんからは「ストレートすぎない?」って(笑)
展示に向けて準備したテキストを見て「この文章が分かりやすく伝わってくるから、タイトルはストレートではなくてひねりを持たせたらどうか」とアドバイスをくださったんです。
そこで、展示や制作のことをたくさん掘り下げて聞いて頂いて、出てきた候補のひとつが「デラ ハジ リ」でした。

う:
個展だと自分次第なところがあるから、気づけない点も出てきますよね、きっと。
一緒に作り上げている空気感が素敵〜。

下:
とても良いタイトルをつけて頂いたなと思います。
学生時代の先輩が見に来てくれた時、「私このタイトル好き。もえちゃんの作品は抽出して再構成しているものだけど、タイトルも言葉を抽出して再構成しているから、ひとつの言葉みたいになってて『うまい!』と思った。」と言ってくれたんです。

対等な立場としてつくる、独自の展示空間

う:
今回の展示会で印象深かったことはありますか?

下:
うーん…やっぱりNowhereさん側からの提案を沢山いただいたことは印象に残っています!
室内のアンティーク感やインテリアの重厚感を考慮して、絵を留めておくには針金を使ってみるのはどうか、とか、この絵はここに置くのがいいんじゃないか、とか、本当にたくさん。
展示会3日目には、カフェに来たお客さんからモチーフを見つけて、在廊しながら制作するところを見ていただくという企画を始めたんですけど、実はこれも初日の動きを踏まえたうえで提案いただいて、急遽行いました。

う:
めちゃめちゃ提案くれますね(笑)

下:
自分にない発想の置き方も提案くださって、新鮮でした(笑)

う:
それは、下浦さん的にはどう思っていたんですか?

下:
どの提案もきちんと理由が納得できることばかりなので、有難かったです。
仮に提案に違和感があれば、きちんと違うとお伝えすれば、それも受け止めていただけるんです。
期間中、お客さんの持ち物から発想を得てポストカードに描いていくイベントも、松川さんが「作品って買うにはハードルが高いんじゃないかな。だけど、萌ちゃんを応援したい人、何か気になるものがほしい人や、制作に参加してみたい人っているんじゃないかな。」と言ってくれたのをきっかけに、急遽行うことにしました。
なんだか、一緒に頑張ってひとつの展示ができている感覚がとても嬉しかったです!

う:
お互い対等な立ち位置での議論で成り立つ展示だったんですね。
下浦さんはアーティストとして、Nowhereは空間として、それぞれに持っている考えを融合させるというか…。

デラ ハジ リの経験で、新しい作品が生まれる予感!

う:
次の展示も既に予定されているとか?

下:
直近では2021年2月に大阪・中崎町で先輩と二人展を行います。
4月・5月には兵庫・尼崎市のTe To Teカフェさんにお声がけいただいているので、予定しているところです。

う:
え〜それは楽しみ!

下:
今回、カフェ空間を意識した展示が初めてでした。いつもだったら悩まない作品の場所決めとか、作品がそもそも壁にくっつかないとか(笑)、そういうハプニングもあって、搬入作業から大変だったんですけど、このハプニングを乗り越えて開催できたことがすごく楽しいなって感じました!
そんな、デラ ハジ リの経験を活かして、また新たな作品を作っていけたらいいなと考えています。

う:
次もカフェが会場ですし、すごく活かされそうな経験ですよね!

下:
デラ ハジ リを行うまでは、木枠のキャンバスや紙に、決まった絵の具で描くというのが当たり前だったんですが、短い制作期間でのベストな選択として、紙や布を使ったんです。
それで「あ、私が表現したいように、支持体や絵の具は変えてしまったらいいんだ」って気づいたんですよね。

う:
ある意味、期間も空間も “制限”の中で展示していたはずなのに、それが逆に新しい発想に繋がるとは・・・制限って発想を狭めちゃうものかなぁなんて思っていたから、私も発見です。
下浦さんの作品に大きな変化が生まれそうな予感!

下:
そうですね!

 

【話したひと】
下浦萌香
Artist:Moeka Shimoura

東京生まれ、大阪育ちの作家。
2020年、大阪教育大学大学院 教育学研究科 芸術文化専攻 修了。
植物や絵具の痕跡といった身の周りにあるものから得た要素とイメージを画面上で組み合わせた作品を発表している。

[下浦萌香 ウェブサイト][下浦萌香 Instagram]

Nowhere Hajinosato
大阪府藤井寺市国府1-1-7

RELATED POSTS

2024.03.15
地元の新鮮野菜を使った料理を味わう おいしいローカル「おいしいテラス」開催!
今回のおいしいテラスでは「おいしいローカル」プロジェクトの連携事業者や近郊農家の食材を使い、「MEARO」が調理したお料理を召し上がっていただきます。 当日は会場のMONZENにて野菜の販売もあります。生産者や連携事業者の方々との交流の機会となります。
2024.03.03
「どこやねん! フジイデラ?」イナズマキャスト 井上陽介さん
フジイデラの魅力に惹かれてフジイデラに移住してきた人、たまたまフジイデラに移住してフジイデラの魅力に気づいた人、そんな人たちもフジイデラに新しい風をもたらしています。地域にフォーカスしたポッドキャスト「イナズマキャスト」を運営し、自身も移住者である井上さんの「どこやねん!フジイデラ?」を映像でお届けします。
2024.03.03
「どこやねん! フジイデラ?」Yuqui-lah(ユキーラ)さん
今回ご紹介するYuqui-lahさんは河内音頭の魅力に惹かれ、藤井寺市の五月会に入門しました。盆踊りの季節はもちろん稽古のたびに地元の関東と藤井寺を往復しています。藤井寺が第2の故郷と思えるほど藤井寺を知り尽くすYuqui-lahさんの「どこやねん! フジイデラ?」を映像でお届けします。
2024.02.17
【予約完売御礼】ホシトヒカリ2 〜星を識り、光が導く〜
3月10日(日)魚座新月、大阪府藤井寺市・土師ノ里(はじのさと)アサノヤにて、「みずのか・ほしのね」のさとえみ & 「ココろハルる」のさいじょうゆかによるイベント「ホシトヒカリ2 〜星を識り、光が導く〜」を開催します。
2024.02.10
【トークイベント】おいしいローカルプロジェクト 「おいしいセッション」
「おいしいセッション」は、私たのネットワークを活かし、食の魅力につながるだけでなく、流通促進にも繋げます。生産者と消費者などが直接交流する場を提供し、地域の食材の需要拡大や新たな流通ルートの開拓につながることを目ざします。また、他地域の食材とのコラボレーションにより、新たな食の価値を生み出し、食の価値向上の機会を探ります。
2023.11.21
オープンアトリエ ガラスの倉庫 〜ハジウム旧津田ガラス〜
「土師の里」で古代から続くものづくりのDNAを活かし、遊休不動産を現代に合わせた空間へと再生させることを目指し、HAJIUM(HAJI + MUSEUM)のプロジェクトで場づくりを行います。
2023.08.13
イベントレポート:『飲み干してきたもの』 〜天野了一 空き缶コレクション 昭和から平成のジュース缶芸術と追憶〜
8/5(土)、8/6(日)に行われた、昭和末期から平成にかけて、青春を捧げて自ら飲み干し、天野了一の見事にメタボリックなお腹を形作っていった、1,000点をゆうに越える様々な内外の「缶ジュース」のコレクション展が行われました。
2023.09.19
7月12日、「おいしいローカル」のキックオフイベントが行われました。
地元の食材や文化を活かし、人々が食を通じて繋がる場を提供することで、新しい食の価値を生み出す「おいしいローカル」プロジェクト。 7月12日、藤井寺ベッカフィーコカフェ2Fにて、まなリンク協議会主催による、当プロジェクトのキックオフイベント 「おいしいセッション」が行われました。

PLACE

船橋の売土地
藤井寺市船橋町
穏やかな時間と時を超える風景を楽しむ
沢田の住宅
藤井寺市沢田4丁目
沢田の”家鉄”住宅で、鉄道を眺めながら過ごす
アサノヤ
藤井寺市林
街、⼈、夢の、結び⽬に。
里庭の箱
藤井寺市国府
あたらしく、なつかしい。
おだやかなくらしと、こだわりのいとなみ。