さて、今回Nowhere Hajinosato×アーティストの行った展示は、絵画です。 下浦萌香さんは、昨年の春大学院を卒業した若手作家。 様々な技法を用いて創作に取り組む下浦さん。今回は「デカルコマニー」という転写の手法を使った作品でいっぱいのNowhere Hajinosatoとなりました。 “作り方”はもちろん、 “伝え方”にも重視しているのが今回のおもしろいところなのかもしれません。
うっちー(以下、う):
まず、真っ先にこれナンダ??と思ったのが展覧会のタイトルの「デラ ハジ リ」。
ここにはどんな意味が込められているのでしょう?
下浦さん(以下、下):
藤井寺と、土師ノ里から「デラ」「ハジ」を取って、「リ」は“再構成する”を意味する「reconstructed」の頭文字です。
“藤井寺の土師ノ里で、見つけたものを再構成する”という意味を込めました。
再構成というのは、私の制作の仕方がモチーフを観察して得た発想を画面上で組み合わせていき、改めて構成していくからです。
う:
なるほど、ちょっとスッキリしました〜(笑)
このネーミングは、下浦さんが考えたんですか?
下:
いいえ、カフェ(pet de nonne)担当の松川さんです。
私が最初考えたのは「藤井寺のなか」というタイトル。作品が分かりづらい表現なので、カフェに来たお客さんたちに伝わりやすいようにと思ったんです。
そしたらNowhereさんからは「ストレートすぎない?」って(笑)
展示に向けて準備したテキストを見て「この文章が分かりやすく伝わってくるから、タイトルはストレートではなくてひねりを持たせたらどうか」とアドバイスをくださったんです。
そこで、展示や制作のことをたくさん掘り下げて聞いて頂いて、出てきた候補のひとつが「デラ ハジ リ」でした。
う:
個展だと自分次第なところがあるから、気づけない点も出てきますよね、きっと。
一緒に作り上げている空気感が素敵〜。
下:
とても良いタイトルをつけて頂いたなと思います。
学生時代の先輩が見に来てくれた時、「私このタイトル好き。もえちゃんの作品は抽出して再構成しているものだけど、タイトルも言葉を抽出して再構成しているから、ひとつの言葉みたいになってて『うまい!』と思った。」と言ってくれたんです。
う:
今回の展示会で印象深かったことはありますか?
下:
うーん…やっぱりNowhereさん側からの提案を沢山いただいたことは印象に残っています!
室内のアンティーク感やインテリアの重厚感を考慮して、絵を留めておくには針金を使ってみるのはどうか、とか、この絵はここに置くのがいいんじゃないか、とか、本当にたくさん。
展示会3日目には、カフェに来たお客さんからモチーフを見つけて、在廊しながら制作するところを見ていただくという企画を始めたんですけど、実はこれも初日の動きを踏まえたうえで提案いただいて、急遽行いました。
う:
めちゃめちゃ提案くれますね(笑)
下:
自分にない発想の置き方も提案くださって、新鮮でした(笑)
う:
それは、下浦さん的にはどう思っていたんですか?
下:
どの提案もきちんと理由が納得できることばかりなので、有難かったです。
仮に提案に違和感があれば、きちんと違うとお伝えすれば、それも受け止めていただけるんです。
期間中、お客さんの持ち物から発想を得てポストカードに描いていくイベントも、松川さんが「作品って買うにはハードルが高いんじゃないかな。だけど、萌ちゃんを応援したい人、何か気になるものがほしい人や、制作に参加してみたい人っているんじゃないかな。」と言ってくれたのをきっかけに、急遽行うことにしました。
なんだか、一緒に頑張ってひとつの展示ができている感覚がとても嬉しかったです!
う:
お互い対等な立ち位置での議論で成り立つ展示だったんですね。
下浦さんはアーティストとして、Nowhereは空間として、それぞれに持っている考えを融合させるというか…。
う:
次の展示も既に予定されているとか?
下:
直近では2021年2月に大阪・中崎町で先輩と二人展を行います。
4月・5月には兵庫・尼崎市のTe To Teカフェさんにお声がけいただいているので、予定しているところです。
う:
え〜それは楽しみ!
下:
今回、カフェ空間を意識した展示が初めてでした。いつもだったら悩まない作品の場所決めとか、作品がそもそも壁にくっつかないとか(笑)、そういうハプニングもあって、搬入作業から大変だったんですけど、このハプニングを乗り越えて開催できたことがすごく楽しいなって感じました!
そんな、デラ ハジ リの経験を活かして、また新たな作品を作っていけたらいいなと考えています。
う:
次もカフェが会場ですし、すごく活かされそうな経験ですよね!
下:
デラ ハジ リを行うまでは、木枠のキャンバスや紙に、決まった絵の具で描くというのが当たり前だったんですが、短い制作期間でのベストな選択として、紙や布を使ったんです。
それで「あ、私が表現したいように、支持体や絵の具は変えてしまったらいいんだ」って気づいたんですよね。
う:
ある意味、期間も空間も “制限”の中で展示していたはずなのに、それが逆に新しい発想に繋がるとは・・・制限って発想を狭めちゃうものかなぁなんて思っていたから、私も発見です。
下浦さんの作品に大きな変化が生まれそうな予感!
下:
そうですね!
【話したひと】
下浦萌香
Artist:Moeka Shimoura
東京生まれ、大阪育ちの作家。
2020年、大阪教育大学大学院 教育学研究科 芸術文化専攻 修了。
植物や絵具の痕跡といった身の周りにあるものから得た要素とイメージを画面上で組み合わせた作品を発表している。