今年オープンを目指す「MONZEN」(モンゼン)は、まさに道明寺天満宮の門前に地域拠点として誕生するコモンスペース。まちの案内所をはじめ、地ビール醸造所、チャレンジキッチン、レンタルスペースとして、築96年の古民家をクラウドファンディングにて再生活用するプロジェクトがはじまります。
門前町とは神社仏閣の周りに形成される「にぎわい」の生まれる場所、かつては観光客へのおもてなしの気持ちが店々に満ちていました。そんな門前と人の「にぎわい」について、とこなりのメンバーでもある道明寺天満宮宮司、南坊城さんに聞きました。
――道明寺天満宮の門前はどうやって形成されてきたのですか?
なりたちは他の門前町と同じく、観光と鉄道によるところが大きいと思います。駅から観光地までの通り道に商店が立ち並び、いわゆる門前町が形成されていきます。道明寺駅は、明治31年に河陽鉄道(のちの大鉄、からの合併、そして近鉄)柏原-古市間にできた、近鉄最古の駅(サラッとスゴいですコレ)。
とくに当時の道明寺天満宮では、一年のうち人出のピークは3月25日、農家の休日にもあたる「河内の春ごと(菜種御供大祭)」と呼ばれる行事で、参拝者はいまの初詣よりはるかに多く、現在の参道のひとまわり外側まで露店がぎっしり立ち並んでいました。しかし、時代が下るにつれ、鉄道から自家用車中心に生活様式が移行する中で、駅から目的の観光地まで参道をブラブラ歩くという風情は残念ながら少なくなってしまいました。
――道明寺エリアのにぎわいについて聞かせてください
道明寺天満宮では年4回「手づくりの市」を開催しています(現在は開催未定)。そこへ商店街からイベント「ふれあいひろば」を始めてもいいかと打診があったので、「ぜひやってください」と。それによって、地域のにぎわいにグッと広がりが出ましたね。にぎわいは一ヶ所だけではなく、いろんな場所にいろんなものがあることが大事かなと。
これまでは、天満宮に来て参拝して帰るだけの人が多かったのですが、最近は、おいしいパン屋さんに訪れた人が、「ついで」に近所に神社があると知り、立ち寄って参拝する。
この「ついで」がとても大事で。天満宮の「ついで」にどこか、ではなく、むしろ天満宮がどこかの「ついで」になりかったんです。「ついで」はエリアにとって良いこと。観光はエリア同士が「ついで」で合体してこそ大きく成長していくのだと思います。
――「MONZEN」プロジェクトのきっかけは?
天満宮の門前にあった築96年(大正15年)の元・煙草屋さんは、もともと天満宮が所有していた土地でした。建物も古いのでいずれ自転車置場にでもしようと思っていましたが、いざ空いてから中を見てみると、とても立派な梁や柱に驚き、これはちょっと待てよと。聞けば阪神大震災でもビクともしなかったとか。そこでところとの西村さんに相談し、まずは場作りの計画が始まったんです。
チャレンジキッチンは西村さんのアイデアで、私はもともと歴史が専門ですので、歴史あるものを後年に遺すのは大事なことかなと思っています。
――「MONZEN」に期待することは?
全体的には「南河内全体の入り口」になれたらな、と。まずMONZENに寄ってもらって、ここから南河内に奥深く入っていってもらえたらと思うんです。まちづくりは地元ごとにやるのがいいと思いますが、観光は「南河内」ぐらいのエリア規模でみていく必要があると思います。
具体的には、森田さんの地ビールや、曜日別で昼夜さまざまな飲食が出店されるチャレンジキッチンに期待しています。一度訪れたお客さんが、他の曜日や時間帯にもう一度行ってみようかなとか。大阪市内のお店が、南大阪エリアへのポップアップとしてMONZENに出店してもらうのもいいですね。お客さんの反応しだいではお店がそのまま道明寺に本格出店するきっかけになるかもしれません。
あとは、NHK大河ドラマに楠公(楠木正成)さんを、みたいな話もあって、実現すれば南河内にもたくさんの人が来ますから、この界隈の話題づくりにもひと役買ってくれるでしょう。しかも観光できる場所がすべて近く(徒歩圏内)にありますから。場所と場所がつながり、大きな面になるんです。
MONZENは、かつての門前町が放っていたにぎわいを、煌めきとともに再び取り戻す吉書になることはまちがいない。たぶんね。
それにしても「ついで」は、とてもいい言葉。
本来の意味は「同時に他のことをする良い機会」であるけども、個人的には「one more(もういっちょ)」的なニュアンスも感じられる。
漢字で書くと「序で」であるが、べつに「次いで」でも「継いで」でも「注いで」でも、どれに間違えても未来につながる善き漢字があたる。だからどれでもいい。
以前、Appleのキャッチコピーで「one more thing」というのがあって。ジョブスがプレゼンテーションで使ったこのフレーズは、「もうひとつ」と同時に、「まだあるんですよ!」というドヤ顏のメッセージも込められていた。「ついで」は、まだ知られてない価値の発掘を予見させ、期待値を高めてくれるうれしい言葉であると思う。